今なぜ電動バイクなの?

 

なぜ電動バイクなの?

最近、電動バイクが話題になっているが、そもそもどんな乗り物なのだろう。電動バイクが生まれた背景からその存在意義について考えてみたい。

 

20世紀初頭に欧米各国で一斉に実用化が進んだガソリンエンジンで走る2輪自動車は、その後約1世紀にわたり動力システムを大きく変えることなく進化してきた。特に20世紀後半は日本製バイクを中心とした排気量拡大によるパワー競争の時代だったと言ってもいい。それがここ数年来の世界的金融危機を発端とする燃料価格の高騰や、人々の環境問題への関心の高まりとともに、乗り物にもエコロジー的な発想が強く求められるようになってきた。

 

いち早く環境性能向上に取り組んだのは4輪メーカーである。プリウスに代表されるエコカーが世界的に売れている。これは「燃費の良さ」という経済性だけの側面で測れるものではない。高額なスポーツカーやラグジュアリーカーを簡単に買うことができるセレブ層がこぞってエコカーを買い求めるのは、それが現代の世相や人々の価値観を反映しているからだ。つまり、エコなライフスタイルであることが「カッコいい」とされる時代になってきたということだ。

 

ひるがえって2輪の場合、4輪に比べて環境対応は遅かったと言わざるを得ない。市場規模が圧倒的に小さいこともあって蔑にされていた部分もあるだろう。もともとが小型で軽量なので燃費性能に優れていたこともある。また、4輪のようにモーターやバッテリーなどのデバイスを収納するスペースに余裕がないため、どうしてもハイブリッド化などは技術的に難しい部分もあった。こうした理由から、昔から電動バイクはあるにはあったが、表舞台に出てきたことはなかった。それが近年、脱化石燃料への波はついに2輪業界にも及び、バッテリーやモーターの小型高性能化や制御ロジックの進歩に後押しされるかたちで、2輪の電動化が急速に現実化している状況だ。

 

電動バイクとはその名のとおり、電気エネルギーを使ってモーターを駆動させて走る乗り物である。従来のガソリンエンジンに例えるなら、燃料は「電気」でそれを溜め込むタンクは「バッテリー」、エンジンは「モーター」という位置付けである。シャーシや操舵系、ブレーキやサスペンションなどの車体まわりは従来のバイクとほぼ同じと考えていい。

 

駆動系はいろいろなタイプがあり、モーターが駆動輪と直結しているインホイールモーター式が現在の主流。エネルギーロスが少なく、構造がシンプルで故障が少ないなどのメリットがあり、スクータータイプのほとんどはこの方式だ。これ以外にも、ホンダのEV-neoのように自動遠心クラッチを採用するタイプや外国製にはチェーン駆動のスポーツバイクタイプもある。

 

電動バイクはガソリンエンジンに比べてエネルギー効率に優れ、ランニングコストが少なくて済むことや、排出ガスを出さずクリーンなこと、電気モーターゆえの静寂性などがメリットとなっている。その点で、時代のニーズにマッチした将来性のある乗り物と言えるだろう。

 

半面、充電時間が長くまだまだ航続距離が短かいこと、パワー不足で速度も遅いこと、無音ゆえに周囲に気付かれにくいなどのデメリットもある。エンジンスクーターや電動アシスト自転車が日常の手軽なコミューターとして普及している日本において、電動バイクならではの魅力をどう引き出していくのかが普及のカギになるだろうし、今後は性能のハイスペック化に伴う法整備の問題も出てくるだろう。

 

かように現在は黎明期にある電動バイクではあるが、今後そう遠くない未来において、モーターサイクルの主役に躍り出る日がやってくるかもしれない。バイク好きとしては、明るい希望を持って今からその動向を見守り続けたいものだ。

 

文/ケニー佐川

 

執筆者紹介
ケニー佐川 (佐川 健太郎)

Web!ke みんなのスクール」校長
モト・マニアックス」代表
ライディングアカデミー東京」校長
MOTOCOM」編集長

国産・外車を問わずミニモトからビッグバイクまで、どんなバイクでも乗りこなすモータージャーナリストとして2輪専門誌等で活躍中。
16歳でホンダ初の2スト50ccスポーツモデル、MB50の“スピードとパワー”に魅せられて以来、バイク歴30年で乗り継いだバイク30台、テストライド経験300台以上。装備や用品、カスタムパーツのテストも数多くこなしてきた。
低速系からサーキットまでライテクに造詣が深く、ライテク関連記事も多数執筆。
メーカー系イベントや各種スクール、走行会などで講師を務める。「鈴鹿4時間耐久ロードレース」や「もてぎ7時間耐久ロードレース」など、モータースポーツにも積極的に参加。MFJ公認インストラクター。米国ケビン・シュワンツ・スクール修了。
愛車はトライアンフDAYTONA675、CB1300SF、エイプ100。63年東京生まれ。
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